事案の概要
被告人は、アキタフーズ元会長。鶏卵の生産・販売等を営む会社の代表取締役として同社を統括し,養鶏業者に関わる業務等を行う2つの団体を運営・統括していました。
農林水産大臣に現金を供与した贈賄3件と,上記会社代表取締役として,同大臣らを代表者とする政治団体開催の政治資金パーティー2回分の対価を他人名義で支払った政治資金規正法違反2件の事案で起訴されました。
被告人の側は、事実関係を認めていたので、裁判では量刑が主な争点になりました。
裁判所は,被告人が重要な政策判断に関し,現職大臣への賄賂により強い影響を及ぼそうとしたもので,公務員の職務の公正と国民の信頼を害した社会的悪影響は大きく,政治資金パーティーの対価の支払を他人名義とする偽装を行って各規制を潜脱したとして、罪状を重く見ました。一方で、要職を辞し,真摯な反省をしているという一般情状から、結局、懲役1年8月,執行猶予4年が言い渡されました。
コメント
大臣等への贈賄は職務関連性が認めやすい
今回被告人の側が事実関係を素直に認めた理由の一つに贈賄先が元農水大臣だったということがあると思います。政府に入っていない通常の国会議員への贈賄ですと、その「職務」の内容が主に国会での審議・議決になるので、職務関連性を立証するのが容易ではありません。これに対し、政務三役(大臣、副大臣、政務官)である国会議員の場合には、大臣等としての職務の範囲がはっきりと決まっているので、渡されたお金が職務感染性を有することの立証にそれほどの困難を伴わないのです。
パーティー券を他人名義で購入は透明性の問題
パーティー券を他人名義で購入した件については、なぜこれが法律違反になるのか不思議に思う人もいるかもしれません。
政治資金規正法22条の6第1項は、他人名義の寄附を禁止しており、22条の8第4項同条項を政治資金パーティーの対価の支払いに準用しています。なので、パーティー券の支払を他人名義ですると同法違反になるわけです。
なぜ、このような規定が置かれているかというと、政治資金パーティーについては、同一の者から150万円以上の対価を受けてはならないとか(22条の8第1項)、20万円を超えてパーティー券を買った人の氏名・住所・職業を収支報告書に乗せないといけない(12条1項1号ト)などの規制があるからです。もし、他人名義のパーティー券購入を認めると、多くの人が分散して買ったと偽装して規制の網をかいくぐることができてしまうのです。