元農水大臣に有罪判決
吉川貴盛 元農林水産大臣が大臣在任中に広島県の大手鶏卵生産会社の元代表から合わせて500万円の賄賂を受け取ったとされる事件です。東京地方裁判所は、受け取った現金すべてについて賄賂だと認め、執行猶予の付いた懲役2年6か月の有罪判決を言い渡しました。
典型的なロビイング汚職事件といえるでしょう。
単純収賄罪で起訴
吉川元農水大臣は、大臣在任中だった令和元年までの2年間に広島県福山市の大手鶏卵生産会社「アキタフーズ」の元代表から、大臣室などで3回にわたって現金合わせて500万円の賄賂を受け取ったとして、単純収賄罪(刑法197条1項前段)で起訴されました。
争点は受け取ったお金の賄賂性の認識
裁判で吉川元大臣は、現金を受け取ったことは認めました。贈賄側のアキタフーズ元代表の贈賄事件で既に有罪判決が出ていたことから、吉川氏の裁判で金銭授受の事実を争うことは難しいと判断したようです。吉川氏の裁判では、同氏が受け取った金銭の賄賂性を吉川氏が認識していたかが争点となりました(この類の裁判では、よくあることです)。
裁判所の判断
結論としては、東京地裁は、吉川氏に受け取ったお金が賄賂だとの認識があったと認定しました。その理由を追っていきましょう。
お金の渡され方
まず、判決は、金銭の授受が「秘密裡に封筒入り現金を渡す」という方法で行われたことに着目しています。
養鶏業界を代表するような立場にあるアキタの元代表が現職の農林水産大臣である吉川氏にお金を渡した趣旨が、専ら被告人の政治活動を支援することだけにあったのであれば、堂々と渡したはず。にもかかわらず、このような渡し方をしたということは、政治献金以外の意図がある可能性を認識しながら現金を受け取ったはずだというロジックです。
領収書の発行や政治資金収支報告書への記載などがなされていないこと
判決は、供与された現金200万円全額について、領収証を作成することをせず、政治資金収支報告書への記載等の政治資金規正法で定められた処理も一切せずに費消していないという事実も指摘しています。
これは、吉川氏が、政治献金以外の趣旨を含むからこそ秘密裡に扱うべき性質の金銭と理解していたことを強く裏付けているといえるという理解でしょう。
金銭授受にいたるまでの経緯
金銭授受以前の事情としては、吉川氏が、相手の具体的な要望内容を知っていたこと、両者ににプライベート上のつきあいがなかったことが挙げられています。
これは、農林水産大臣として何らかの取り計らいが行われるよう期待していて、そのような期待に応えてほしいとの趣旨を含めて金銭を渡していることを察知していたはずという意味で、贈賄意図を認識していた方向の事実と評価されます。
金銭授受の後の吉川氏の行動
さらに、判決では吉川氏が、金銭を受け取った後アキタフーズ側の意向に沿うような言動をしたことも、同氏の認識を裏付けるものとして評価しています。
執行猶予付きの有罪判決が
結局、東京地方裁判所は、吉川氏が受け取った500万円すべてを賄賂だと認定しました。その上で、懲役2年6か月、執行猶予4年、追徴金500万円の有罪を言い渡しました。