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英国 (FIRS)日本語私訳

英国国家安全保障法2023

第4部 外国活動及び外国影響力登録制度

National Security Act 2023
Part 4 — Foreign Activities and Foreign Influence Registration Scheme

訳者注

本仮訳は、英国国家安全保障法2023(National Security Act 2023, c.32)第4部(第65条から第83条まで)の法律本文を対象とする。

外国影響力登録制度(Foreign Influence Registration Scheme: FIRS)は2025年7月1日に施行された。同制度は、外国権力等との関係に基づく一定の活動を対象とする「強化層(enhanced tier)」と、外国権力の指示に基づく政治的影響活動を対象とする「政治的影響層(political influence tier)」から構成される。

もっとも、第4部の法律本文のみからFIRSの具体的な適用範囲を確定することはできない。指定者、適用除外、登録事項、登録情報の公表その他の制度の具体化については、別表13から15まで及び2025年に制定された下位規則等を併せて参照する必要がある。本仮訳には、これらの別表及び下位規則は含まれていない。

また、国家安全保障法2023については、その後の法改正にも留意する必要がある。2026年7月8日にはNational Security (State Threats) Act 2026が成立し、外国権力脅威活動(foreign power threat activity)に関与する団体を指定し、その指定団体への一定の支援等を犯罪とする制度が設けられた。同法は国家安全保障法2023その他の関連法制と接続するものであるが、2026年9月11日現在確認できる法令資料上、本仮訳の対象である第4部(第65条から第83条まで)に対する直接の改正は確認されていない。

本仮訳では、条文の読みやすさのみならず、英国法上の期限計算の起算点及び条文の置換・読み替えの構造を可能な限り保持することとした。訳語は暫定的なものであり、英国法上の概念を日本法上の概念と同一視するものではない。


指定者の活動

第65条 外国活動取決めの登録義務

(1) 「外国活動取決め(foreign activity arrangement)」とは、ある者(以下「P」という。)と指定者との間の合意又は取決めであって、当該指定者がPに対し、次のいずれかを行うよう指示するものをいう。

(a) 英国内において関連活動を行うこと。
(b) 英国内において関連活動が行われるよう手配すること。

(2) この条において「関連活動(relevant activities)」とは、

(a) 第(3)項に基づく規則が当該指定者について適用される場合には、当該規則によって定められる活動をいい、
(b) その他の場合には、すべての活動をいう。

(3) 国務大臣は、この条の目的上関連活動となる活動について、すべての指定者について、又は規則で定める指定者について、規則で定めることができる。

(4) Pが外国活動取決めを締結した場合、Pは、当該取決めを締結した日から始まる10日の期間が終了する前に、当該取決めを国務大臣に登録しなければならない。

(5) Pは、次の各号の双方に該当するときは、犯罪を犯したものとする。

(a) 第(4)項に従わなかったこと。
(b) 当該取決めが外国活動取決めであることを知っていたか、又はPが知っていたその他の事情に照らして、そのことを合理的に知るべきであったこと。


第66条 「指定者」の意義

(1) 「指定者(specified person)」とは、次の者をいう。

(a) 国務大臣が規則によって指定した外国権力。
(b) 外国権力以外の者であって、国務大臣が規則によって指定したもの。

(2) 外国権力以外の者については、次の各号の双方に該当する場合に限り、規則によって指定することができる。

(a) 当該者が個人でないこと。
(b) 当該者が外国権力によって支配されていると国務大臣が合理的に信じること。

(3) ある者が外国権力によって支配されている場合については、別表13に定める。

(4) 国務大臣は、英国の安全又は利益を保護するために合理的に必要であると認める場合に限り、外国権力又は外国権力以外の者を指定する規則を制定することができる。

(5) 外国権力又は外国権力以外の者を指定する規則は、当該規則の施行前に当該指定者との間で締結された外国活動取決めについて、第65条第(4)項を、当該規則で定める修正を加えて適用する旨を定めることができる。


第67条 未登録の外国活動取決めに基づく関連活動の実施等の罪

(1) この条は、ある者(P)が、第65条第(4)項により登録を要する外国活動取決めを締結した場合に適用する。

(2) Pは、次の各号のすべてに該当するときは、犯罪を犯したものとする。

(a) 当該取決めに基づき、英国内において関連活動を行い、又は関連活動が行われるよう手配したこと。
(b) 当該取決めが登録されていないこと。
(c) Pが外国活動取決めに基づいて行動していることを知っていたか、又はPが知っていたその他の事情に照らして、そのことを合理的に知るべきであったこと。

(3) P以外の者は、次の各号のすべてに該当するときは、犯罪を犯したものとする。

(a) 当該取決めに基づき、英国内において関連活動を行い、又は関連活動が行われるよう手配したこと。
(b) 当該取決めが登録されていないこと。
(c) 当該者が外国活動取決めに基づいて行動していることを知っていたか、又は当該者が知っていたその他の事情に照らして、そのことを合理的に知るべきであったこと。

(4) 第(3)項の犯罪に係る手続においては、当該者が次の各号の双方を示した場合、抗弁となる。

(a) 当該取決めが登録されているか否かを確認するため、合理的に実行可能なすべての措置を講じたこと。
(b) 当該取決めが登録されていると合理的に信じていたこと。

(5) 第(4)項に掲げる事項について、それを争点とするに足りる十分な証拠が提出され、かつ、その反対の事実が合理的疑いを超えて証明されない場合には、当該事項は示されたものとみなす。

(6) この条において「関連活動」は、第65条におけるものと同じ意味を有する。


第68条 指定者の関連活動の登録義務

(1) 外国権力ではない指定者は、当該活動が当該指定者によって国務大臣に登録されていない限り、英国内において関連活動を行ってはならない。

(2) 外国権力ではない指定者の役職者、被用者その他の職員は、その資格において、当該活動が当該指定者によって国務大臣に登録されていない限り、英国内において関連活動を行ってはならない。

(3) 外国権力である指定者の役職者、被用者その他の職員は、その資格において、次の各号の双方に該当する限度において、英国内において関連活動を行ってはならない。

(a) 当該者が、その活動又は自らが行動する資格について、一般的に又は特定の者に対して虚偽表示を行っていること。
(b) 当該活動が当該指定者によって国務大臣に登録されていないこと。

(4) この条において「関連活動」とは、

(a) 第(5)項に基づく規則が当該指定者について適用される場合には、当該規則によって定められる活動をいい、
(b) その他の場合には、すべての活動をいう。

(5) 国務大臣は、この条の目的上関連活動となる活動について、すべての指定者について、又は規則で定める指定者について、規則で定めることができる。

(6) 「虚偽表示(misrepresentation)」とは、合理的な者であれば、重要な点において虚偽又は誤解を招くと認める表示をいう。

(7) 虚偽表示は、陳述その他いかなる行為(不作為を含む。)によっても行うことができ、明示的であると黙示的であるとを問わない。

(8) 虚偽表示には、特に次のものを含むことができる。

(a) 当該者の身元又は目的についての虚偽表示。
(b) 情報の全部又は一部が真実であっても、その提示方法によって虚偽表示となるもの。

(9) 第(1)項又は第(2)項の禁止に違反した者は、犯罪を犯したものとする。

(10) 第(3)項の禁止に違反した者は、同項(a)に該当することを知っていたか、又はその者が知っていたその他の事情に照らして、そのことを合理的に知るべきであった場合には、犯罪を犯したものとする。

(11) 第(9)項又は第(10)項の犯罪に係る手続においては、当該者が次の各号の双方を示した場合、抗弁となる。

(a) 当該活動が登録されているか否かを確認するため、合理的に実行可能なすべての措置を講じたこと。
(b) 当該活動が登録されていると合理的に信じていたこと。

(12) 第(11)項に掲げる事項について、それを争点とするに足りる十分な証拠が提出され、かつ、その反対の事実が合理的疑いを超えて証明されない場合には、当該事項は示されたものとみなす。


外国権力の政治的影響活動

第69条 外国影響取決めの登録義務

(1) 「外国影響取決め(foreign influence arrangement)」とは、ある者(P)と外国権力との間の合意又は取決めであって、当該外国権力がPに対し、次のいずれかを行うよう指示するものをいう。

(a) 英国内において政治的影響活動を行うこと。
(b) 英国内において政治的影響活動が行われるよう手配すること。

(2) 当該外国権力が指定者である場合、その取決めは、第65条の目的上関連活動となる政治的影響活動に関する限度において、外国影響取決めとはならない。

(3) Pが外国影響取決めを締結した場合、Pは、当該取決めを締結した日から始まる28日の期間が終了する前に、当該取決めを国務大臣に登録しなければならない。

(4) この条の施行日前に締結され、かつ施行日において効力を有する外国影響取決めについては、第(3)項中「28日」から末尾までを「この条の施行日から始まる3か月」と読み替えて、同項の規定を適用する。

(5) Pは、次の各号の双方に該当するときは、犯罪を犯したものとする。

(a) 第(3)項に従わなかったこと。
(b) 当該取決めが外国影響取決めであることを知っていたこと。


第70条 「政治的影響活動」の意義

(1) 活動が次の各号の双方に該当するときは、「政治的影響活動(political influence activity)」とする。

(a) 第(2)項に掲げる活動であること。
(b) 当該活動を行う目的又はその目的の一つが、第(3)項に掲げる事項又は者に影響を及ぼすことであること。

(2) この項に掲げる活動は、次のとおりとする。

(a) 別表14に掲げる者に対して何らかの連絡を行うこと。
(b) 公衆に対する連絡を行うこと。ただし、当該連絡が外国権力によって、又は外国権力の指示により行われていることが、その連絡から合理的に明らかである場合を除く。
(c) 英国人等に対して金銭、物品又は役務を提供すること。

(3) この項に掲げる事項及び者は、次のとおりとする。

(a) 英国における選挙又は国民投票。

(b) 次に掲げる者又は機関による決定。

(i) 1975年国務大臣法にいう国務大臣又は英国政府の省庁。
(ii) 北アイルランド大臣、北アイルランド首席大臣、北アイルランド副首席大臣、1998年北アイルランド法第19条に基づき任命されたジュニア・ミニスター、北アイルランドの省庁又は北アイルランド議会執行委員会。
(iii) スコットランド大臣又はスコットランド首席大臣。
(iv) ウェールズ大臣、ウェールズ首席大臣又はウェールズ政府法務長官。

(c) 英国登録政党の手続。

(d) 英国議会のいずれかの院、北アイルランド議会、スコットランド議会又はウェールズ議会の議員が、その資格において行う行為。

(4) 第(2)項(b)の目的上、者が次のいずれかを行うときは、公衆に対する連絡を行ったものとする。

(a) 情報、文書その他の物を公表し、又は頒布すること。
(b) 公表又は頒布のために、情報、文書その他の物を作成すること。

(5) この条において、

「英国人等(UK person)」は、第2条におけるものと同じ意味を有する。

「英国登録政党(UK registered political party)」とは、2000年政党・選挙及び国民投票法第2部に基づき登録された政党をいう。


第71条 未登録の外国影響取決めに基づく政治的影響活動の実施等の罪

(1) この条は、ある者(P)が、第69条第(3)項により登録を要する外国影響取決めを締結した場合に適用する。

(2) Pは、次の各号のすべてに該当するときは、犯罪を犯したものとする。

(a) 登録期間の終了後、当該取決めに基づき、英国内において政治的影響活動を行い、又は政治的影響活動が行われるよう手配したこと。
(b) 当該取決めが登録されていないこと。
(c) Pが外国影響取決めに基づいて行動していることを知っていたか、又はPが知っていたその他の事情に照らして、そのことを合理的に知るべきであったこと。

(3) P以外の者は、次の各号のすべてに該当するときは、犯罪を犯したものとする。

(a) 登録期間の終了後、当該取決めに基づき、英国内において政治的影響活動を行い、又は政治的影響活動が行われるよう手配したこと。
(b) 当該取決めが登録されていないこと。
(c) 当該者が外国影響取決めに基づいて行動していることを知っていたか、又は当該者が知っていたその他の事情に照らして、そのことを合理的に知るべきであったこと。

(4) この条において「登録期間」とは、Pが当該取決めを登録しなければならない期間をいう(第69条第(3)項及び第(4)項参照)。

(5) 第(3)項の犯罪に係る手続においては、当該者が次の各号の双方を示した場合、抗弁となる。

(a) 当該取決めが登録されているか否かを確認するため、合理的に実行可能なすべての措置を講じたこと。
(b) 当該取決めが登録されていると合理的に信じていたこと。

(6) 第(5)項に掲げる事項について、それを争点とするに足りる十分な証拠が提出され、かつ、その反対の事実が合理的疑いを超えて証明されない場合には、当該事項は示されたものとみなす。


第72条 外国権力の政治的影響活動の登録義務

(1) 外国権力の役職者、被用者その他の職員は、その資格において、次の各号の双方に該当する限度において、英国内において政治的影響活動を行ってはならない。

(a) 当該者が、その活動又は自らが行動する資格について、一般的に又は特定の者に対して虚偽表示を行っていること。
(b) 当該活動が当該外国権力によって国務大臣に登録されていないこと。

(2) 当該外国権力が指定者でもある場合、第(1)項の禁止は、その政治的影響活動が第68条の目的上関連活動となる限度において適用しない。

(3) 「虚偽表示」とは、合理的な者であれば、重要な点において虚偽又は誤解を招くと認める表示をいう。

(4) 虚偽表示は、陳述その他いかなる行為(不作為を含む。)によっても行うことができ、明示的であると黙示的であるとを問わない。

(5) 虚偽表示には、特に次のものを含むことができる。

(a) 当該者の身元又は目的についての虚偽表示。
(b) 情報の全部又は一部が真実であっても、その提示方法によって虚偽表示となるもの。

(6) 第(1)項の禁止に違反した者は、同項(a)に該当することを知っていたか、又はその者が知っていたその他の事情に照らして、そのことを合理的に知るべきであった場合には、犯罪を犯したものとする。

(7) 第(6)項の犯罪に係る手続においては、当該者が次の各号の双方を示した場合、抗弁となる。

(a) 当該活動が登録されているか否かを確認するため、合理的に実行可能なすべての措置を講じたこと。
(b) 当該活動が登録されていると合理的に信じていたこと。

(8) 第(7)項に掲げる事項について、それを争点とするに足りる十分な証拠が提出され、かつ、その反対の事実が合理的疑いを超えて証明されない場合には、当該事項は示されたものとみなす。


適用除外

第73条 適用除外

別表15は、適用除外について定める。


情報

第74条 登録情報

(1) 国務大臣は、次に掲げるものを登録する際に、登録者が国務大臣に提供しなければならない情報について、規則で定めることができる。

(a) 第65条に基づく外国活動取決め。
(b) 第68条に基づく関連活動。
(c) 第69条に基づく外国影響取決め。
(d) 第72条に基づく政治的影響活動。

(2) 第(1)項に基づく規則は、特に、登録を要する取決め又は活動に基づき当該者が行った手配に関する情報の提供を求めることができる。

(3) 第(1)項(c)に基づく規則は、特に、登録を要する取決めに基づき、登録期間中に何人かによって行われ、又は行われるよう手配された政治的影響活動に関する情報の提供を求めることができる。

(4) 第(3)項において「登録期間」は、第71条におけるものと同じ意味を有する。

(5) 登録された取決め又は登録された活動に関して、この条又は第75条に基づき国務大臣に提供された情報に重要な変更が生じた場合、その取決め又は活動を登録した者は、その変更が効力を生じた日から始まる14日の期間が終了する前に、その変更を国務大臣に通知しなければならない。

(6) 国務大臣は、

(a) 第(5)項に基づき国務大臣に提供すべき情報について規則で定めることができ、
(b) 何が重要な変更に当たり、又は当たらないかについて指針を発することができる。

(7) この条に基づく規則では、情報を提供すべき形式について定めることができる。

(8) 第(5)項に従わなかった者は、その不履行の結果、登録された取決め又は登録された活動に関して国務大臣に提供されている情報が、重要な点において虚偽、不正確又は誤解を招くものとなった場合には、犯罪を犯したものとする。


第75条 情報通知

(1) 国務大臣は、次に掲げる者に対して情報通知を発することができる。

(a) 第65条に基づき登録された外国活動取決めの当事者である者。
(b) 第65条に基づき登録を要するにもかかわらず登録されていない外国活動取決めの当事者であると国務大臣が合理的に信じる者。
(c) (a)又は(b)に掲げる外国活動取決めに基づき、英国内において関連活動を行い、又は関連活動が行われるよう手配していると国務大臣が合理的に信じる者。
(d) 第68条に基づき関連活動を登録した者。
(e) 第68条に基づき登録された関連活動を行っていると国務大臣が合理的に信じる者。
(f) 第68条に定める禁止に違反し