日本では、ロビイング自体は違法ではありません。ただし、ロビイングの際に不適切な形で金品等の授受を行うと、刑法や政治資金規正法などに抵触するおそれがあります。
以下に、ルールメイキングと関連する法規のうち重要なものを整理してみました。
ロビイングをする権利に関する法制度
まず、国に対して働きかけをすることを権利として認める一連の法令があります。
憲法
憲法16条は、「 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」と規定して、請願権を保障しています。 憲法の教科書では、同条を受けて請願法を制定されて云々と説明されることが多いため、「請願権」は単に請願法上の請願を想定しているだけのような印象を受けるかもしれません。 しかし、同条の請願権は、もっと広くおよそ広く国民から国家機関に対する働きかけを保障したものです。国に対する働きかけを国交省が妨害したため国家賠償請求が認められた裁判例などがあります(東京高裁平成31年4月10日判決)。
不適切なロビイングを規制する法制度(腐敗防止法制)
次に、国に対する行き過ぎた働きかけを規制する法令があります。 また、外国に関連する企業が違法な働きかけをした場合に問題になる外国法や、外国公務員に対して違法な働きかけをした場合に問題になる国内法などにも注意が必要です。
刑法(賄賂罪)
刑法197条~198条で規定されています。公務員への賄賂を処罰する規定です。ここでいう公務員とは、官公庁の職員のみならず、特別公務員である国会等の議員も含まれます。
あっせん利得処罰法
国会議員や議員秘書への金品の授受を対象として2000年に制定された法律です。刑法のあっせん収賄罪(197条の4)よりも適用要件が緩やかになっています。
不正競争防止法
外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止の規定があります(18条)。この禁止規定は、国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約の発効に合わせて施行されました。
外国法の域外適用(FCPA、UKBAなど)
我が国の不正競争防止法同様に、諸外国でも当該国以外の公務員に対する不正の利益の供与等を罰する法令があります。外国が関連する事案では、利益の供与先が日本の公務員であっても、これらの外国法が適用される場合があるので、注意が必要です。
政治資金規正法(企業団体献金禁止、外国人寄付禁止、収支の公開)
政治団体等に対する寄附を規制するとともに、お金の流れを公開するための法律です。団体の種類ごとの寄附の上限や、寄附の主体の制限などについての規定があります。
国家公務員倫理法・国家公務員倫理規程
国家公務員倫理法5条1項を受けた国家公務員倫理規程に、倫理法利害関係者から一般職公務員に対してなされる利益供与についての詳細な規制があります。 一般職が対象となっているので(倫理法2条1項)、特別職である国会議員や公設秘書などには適用がありません。
制度化されたルールメイキング
国民からの働きかけによって制度の解釈を明確にしたり、運用を調整したり、制度を変更したりすることが制度として想定されているものです。
請願法
文書による請願について一般的な原則を定めた6箇条の短い法律です。その他国会に対する請願については、国会法79条~82条、衆議院規則171条~180条、参議院規則162条~173条などで定めています。
グレーゾーン解消制度
産業競争力強化法7条に基づく制度です。事業者が、現行の規制の適用範囲が不明確な場合に、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度です。
規制のサンドボックス(新技術等実証制度)
産業競争力強化法6条1項、8条の2~8条の4に基づく制度です。新たな技術の実用化や新たなビジネスモデルが現行法令と抵触する場合に、事業者の申請・規制官庁の認定の下で、事業者単位で実証を行う制度です。実証により得られた情報やデータに基づき、規制の見直が検討されます。
新事業特例制度
産業競争力強化法6条1項、9条1項に基づく制度です。この制度では、新事業活動を行おうとする事業者が、その支障となる規制の特例措置を提案します。そして、認定が得られれば、安全性等の確保を条件として、事業者単位で、具体的な事業計画に即して、規制の特例措置の適用を受けられます。
パブリックコメント制度
行政手続法第6章に定められている意見公募手続きです。国の行政機関が命令等(政令、省令など)を定めようとする際に、事前に、広く一般から意見を募り、その意見を考慮することが義務づけられています。行政運営の公正さの確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に役立てることが目的です。命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案及び関連資料をあらかじめ公示し、意見提出期間等を定めて広く一般の意見を求める必要があります(第39条第1項)。
ロビイング規制法・ロビイスト登録制度(日本では未制定)
米国のようにロビイストの登録制度等を法で定めている国もありますが(連邦ロビー活動規制法→ロビイング開示法(1995)→誠実なリーダーシップと開かれた政治法(2007))、わが国ではこの分野の法整備は未だ進んでいません。
各種行政法規
以上、ルールメイキング関連の法令を概観してきましたが、ルール変更の対象となるべき各種行政法規は、無数に存在しています。それらの調査・分析が実は大変に骨の折れる仕事です。