「ロビイング」と「根回し」。一見似ている概念ですが、どのような違いがあるのでしょうか。
ロビイングの意味
ロビイング(ロビー活動)とは、自己または依頼者の利益のために、立法府の議員や行政府の官僚等の政策決定者に対して、その政策的意思決定に影響を与えるために、(直接の接触により)働きかけることです。
ロビイングは、本来は、議会のロビー等において議員等に直接の働きかけをすること(狭義のロビイング)を指していました。現在ではもう少し広く政策決定者に影響を及ぼす活動を直接的・間接的をとわず含める(広義のロビイング)ようになっています。
根回しの意味
根回しとは、「会議や交渉を円滑,有利に運ぶために,非公式の場で合意の形成をはかること」です。あるいは、「物事を進める際、事前に関係者の了承を得ること」などと言われます。
本来、根回しというのは、木を移植する際、周囲をあらかじめ掘って根の一部を切り落とし、細根の発生を促進させることをいいます。ひと手間かけることによって、木が移植によって枯れてしまうリスクを減らし、確実に移植を成功させるための技術です。
そこから転じて、事前に周囲に働きかけをすることによって、円滑に物事を進めることを指すようになりました。
ロビイング・根回しの共通する点
これらの概念は、その行動の形態において似ています。ロビイングは、典型的には、政治家や官僚に対する一対一の説得などの形を取ります。根回しは、非公式の場で合意形成したり承諾を得たりすることです。
ロビイングも根回しも、どちらも非公式の場での話し合いという形をとることが多いです。なので、外形的に見る限りでは、両者は同じようなことをやっているように見えます。
両者の異なる点
ロビイング/根回しを行う当事者の属性の違い
ロビイングは、民間から政治家や官僚など国家(または、国際機関)の権力を支配している者に対して行われます。民間同士の関係で行われる働きかけはロビイングとは言いません。また、国家内部での権限・権力を持った者同士の駆け引きも通常はロビイングとは呼びません。
一方、根回しは、当事者に限定がありません。政治家同士も根回しをしますし、民間企業の内部でも根回しは行われます。さらに官民の間でも根回しは可能です。
ロビイングと根回しとを比べると、前者のほうが主体の範囲がより狭いと言えます。
ロビイング/根回しの活動が副次的かどうか
根回しというものは、副次的な性質を持ちます。すなわち、本来自分自身で達成すべき事が先ずあります。それを容易・円滑に行うために行われる間接的な働きかけが根回しである。以上のような、関係にあります。
これに対して、ロビイングは、このような制約がありません。政治的なゴール達成に向けた活動であれば、十分です。それが副次的なもの(他の活動を容易にするためのもの)である必要はありません。
実際の例
ロビイングであるが、根回しでないもの
民間企業がある法改正を要望して議員に陳情する場合
民間による権力者に対する政治的な働きかけです。そのため、ロビイングであることは間違いありません。
他方、民間企業にとっては、まさに法改正自体が目的です。民間企業がやろうとしている事業を円滑に行うための下準備とは違います。したがって、根回しという表現は不適切です。
根回しであるが、ロビイングでないもの
取締役会を円滑に進めるために事前に各取締役に説明に行く場合
これは、取締役会における議事進行という本来の仕事があります。それを円滑に進めるための副次的な活動として各取締役に説明を行っているわけです。なので、根回しにあたります。
しかし、民間企業の内部で働きかけをする場合には、自分も相手方も民間です。国家権力や国家機関等は、関係しません。したがって、ロビイングとはいえません。
議員立法を提出した議員が法案の円滑な審議に向けて他の議員に働きかけをするばあい
これも、法案の円滑な審議という本来の目的を達成するための副次的な活動です。したがって、根回しと言えます。
しかし、話し合いが議員同士で行われています。民間から権力者に対する働きかけとはいえないので、ロビイングではありません。
根回しであり、かつロビイングであるもの
官公庁にある許認可申請をした民間事業者が許認可が下りる可能性を高めるために関係部署や政治家に説明などの働きかけをする場合
この場合、民間から役所や政治家という権力に対する働きかけです。なので、ロビイングと言えます。
同時にこの働きかけは、許認可申請を通すという内容です。これは、民間事業者が行おうとしていることを容易・円滑に行うための副次的なものです。ゆえに、根回しとも言えます。