コンテンツへスキップ
ホーム » 政治資金規正法上の「寄附」とは何か?

政治資金規正法上の「寄附」とは何か?

なぜ「寄附」の概念が重要か?

政治資金規正法では、政治活動に関する寄附について様々な規制を設けています。たとえば、質的制限として、国から補助金等を受けている法人による寄附の禁止(22条の3第1項)や外国人等からの寄附の受け取りの禁止(22条の5第1項)が、量的制限として、寄附の総額の制限(21条の3第1項、2項)などがあります。

これらの規定は、政治活動に関する「寄附」について適用されます。逆に言えば、交付されたものが「寄附」でなければ政治資金規正法の制限が適用されません。つまり、「寄附」に対して政治資金規正法の規制がかかるかどうかは、「寄附」に該当するかどうかで決まるわけです。

そのようなわけで、「寄附」の概念をどのように捉えるべきかが重要になります。

寄附の定義

寄附の定義は、政治資金規正法に書いてあります。同法4条3項は、寄附を「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のもの」と定義しています。

原則

「金銭」や「物品」はあくまでも「財産上の利益」の例示ですから、金銭や物品を交付しなくても、相手に財産的利益をもたらすものであればこの「利益」に該当します。たとえば、労務の無償提供などもこれに含まれるものとされています。市場価値のあるサービスを無償で提供する行為も広く財産上の利益の供与に該当することになるでしょう(なお、「財産上の」利益ですので、財産上ではないもの、たとえば名誉とか情交などは除かれます)。

例外

以上が原則なのですが、先ほどの寄附の定義からもわかるように、財産上の利益の供与又は交付であったとしても、(i)党費、(ii)会費、(iii)債務の履行としてされるものは、例外的に、寄附にはあたらないものとされています。

ここでいう債務の履行というのは、公的な債務や有償契約による債務に限定されると解されています。というのも、贈与契約のような無償契約の履行としてなされる給付まで「寄附」に該当しないということになると、典型的な利益供与の類型が法で規制されないというおかしなことになってしまうからです。

有償性と対価性

さて、無償契約による利益の移転が「債務の履行」には該当しないとして、それでは、有償契約に基づく財産上の利益の供与・交付は、全て寄附に該当しないかというとそうとも言えません。有償契約だったとしても、対価的な均衡がとれているものとそうでないものがあるからです。

たとえば、ある人が持っている時価1億円の土地を政治家に対して100万円で売却する契約を考えてみます。これは、たしかに土地という有価物を金銭と交換する売買契約という類型の契約ですから、間違いなく有償契約です。しかしあまりにも廉価で政治家に売却しているので実質的な寄附ではないかと思う人もいるのではないでしょうか(あるいは、逆に政治家がもっている時価100万円の土地を1億円で買い取るようなケースでも同様です)。

東京高裁判決

判例もこの点に関しては、有償契約における対価的な均衡に着目して判断をしています。たとえば、政治資金パーティー券の代金支払いが寄附にあたるかが問題となった事例がありました(政治資金パーティーというのは、政治家が資金集めのために行うことが認められているパーティーのことで、開催費用に対してパーティー券の値段が高めに設定されているのが普通です(差額が、政治資金になる))。

原則と例外

東京高裁は、「パーティー券の購入代金の支払いは、その代金額が政治資金パーティーへの出席のための対価と認められる限り、「寄附」には当たらない」として、対価性があれば、原則として寄附にはならないという原則を示しました(東京高判平成28年9月19日)。

その上で、パーティー券購入代金が、「社会通念上、それ自体が政治資金パーティー出席のための対価の支払とは評価できない場合にはその支払額全部が、また、その支払額が対価と評価できる額を超過する場合にはその超過部分が「寄附」に当たるというべである」として、社会通念上の対価性を欠く場合にはたとえ有償購入だったとしても寄附に該当する例外的な場合があるとしました。

社会通念上の対価性

判決は、社会通念上の対価性を判断する要素として、パーティー券の購入代金の支払実態、当該パーティー券に罹る政治資金パーティーの実態、パーティー券の金額と開催されるパーティーの規模、内容との釣り合い等をあげています。

要するに、お金の支払やパーティーの開催状況を具体的に見て、対価的に釣り合いが取れているかを個別的に判断する必要があるということです。企業側の人が、政治家からパーティー券等を購入したり、有償で講演を依頼したり、あるいはサービスを提供したりする場合には、政治家から不当に高く購入していないか、政治家に不当に安く提供していないかなど、対価性のチェックが欠かせません。そして、もし対価性を欠く場合には、政治資金規正法上の寄附として同法上のルールが守られているのかを確認する必要があります。

安易な判断は禁物

対価性の有無は、第一次的には警察等の捜査機関が見ます。彼らが、社会通念上の対価性を欠く財産上の利益の供与等が違法に行われたと判断すれば、捜査が開始される可能性があります。

民間企業などが政治家と有償契約を結ぶ際には、「対価を支払っているから寄附にあたらないだろう」と安易に判断してしまうのは、とても危険です。有償契約によってやり取りされる財やサービスの価値と対価の額をはじめとする具体的な状況を個別的に検討して、法律に抵触しないことを確認する必要があります。